恋の才能 ~年下御曹司はバリキャリ女の私にご執心!?~

恋の才能 ~年下御曹司はバリキャリ女の私にご執心!?~

last updateDernière mise à jour : 2026-09-22
Par:  日暮ミミ♪Mis à jour à l'instant
Langue: Japanese
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ずっと恋愛なんてそっちのけで仕事一筋にバリバリやってきた、いわゆるバリキャリ女の二十八歳・尾崎茜は、酔い潰れた翌朝、まったく見憶えのない部屋のベッドで下着姿で目を覚ます。 そこはなんと、同じ会社に勤める社長の御曹司で、二つ年下の冴島稜也の部屋だった!  自分には恋の才能がないんだと嘆く茜に、彼は言う。「僕はずっと、茜さんのことが好きだったんです」と。そして、「僕と付き合いませんか」と交際を申し込んできて……!?

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Chapitre 1

プロローグ

「――ん……?」

 その朝、ベッドの上で目を覚ました私――ざきあかねはいくつもの違和感に気づいた。

「ここは一体どこなの……?」

 まず、ここは自分が一人暮らしをしている賃貸マンションの部屋ではないということ。明らかに部屋の広さが違うし(私の部屋はもっと狭いのだ)、間取りも違う。そしてベッドの広さも、マットレスの硬さも。私が使っているベッドはシングルサイズだけれど、このベッドは明らかにダブル以上の広さがある。

 そして、自分が今服を着ておらず、下着姿であること。下着とはいっても色気の欠片もないダークグレーのスポーツブラとショーツのセットの上からキャミソールを着ているだけなのだけれど。

 ……そういえば、ものすごく頭が痛い。これも違和感の一つといえばそうかもしれない。

「えっと……、昨夜ゆうべは何をしてたんだっけ……?」

 私は自分の記憶を手繰り寄せる。昨夜は確か、誰かと都内のバーでお酒を飲んでいた。アルコールにそれほど強いわけではない私は、しこたまアルコール度数の高いお酒を飲みまくり、記憶がなくなるまで酔い潰れたのだろう。その後の記憶は一切ない。

 では、その「誰か」とは一体誰だったのか。この状況からして同性だったとは考えにくいので、多分男性だろう。それも、一緒に飲みに行くような仲だろうから、おそらくは同じ会社の人間。財布の現金も減っていないし、クレジットカードを取り出した形跡もないので、私は自分の飲み代を支払っていないらしい。ということはその人物のおごりだろうから、この部屋からしても金銭的に余裕のある人物だと思う。

「そんな人、ウチの会社にいたかな……?」

 私は大手商社の〈冴島さえじま物産〉に勤めるOLで、総合職として働くいわゆる〝バリキャリ〟というヤツである。月給はそこそこ高い方なのだけれど、こんなにいいマンション――多分賃貸ではなく購入したものだろう――に住んでいて、金銭的に余裕のある男性なんて数えるほどしか思い浮かばない。

 そんな人と、酔い潰れた状態で万が一にも何かあったとしたら……? 私はその男に一生分の弱みを握られたに等しい。私の今後のキャリアにも傷がつくかもしれない!

「……どうしよう……」

 私はこれがとんでもない事態だと思い、絶望感にわれた。――とりあえず帰ろう。そして、昨夜のことは悪い夢だったと思ってさっさと忘れるのだ。

 さあ着替えなければとベッドを抜け出そうとして、またひどい頭痛に襲われる。二日酔いがこんなにつらいものだなんて思わなかった。

「……あ、茜さん。目が覚めました? 二日酔いみたいですけど、大丈夫ですか?」

 そこに聞こえてきたのは、ものすごく聞き憶えのある男の声。

「あ、あなたは……冴島くん!?」

 声の主はなんと、同じ部署で働く社長のおんぞうで二歳年下の冴島りょうだった。ということはここは彼の部屋で、「二日酔い」と言ったことからして昨夜一緒に飲んでいた相手も彼ということらしい。

 私は自分が下着姿だったことを思い出し、なけなしのしゅう心からとっさに毛布を被った。

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見知らぬ部屋で目を覚ました朝 Page1
「――ねえ、冴島くん。あの……、昨夜……は何があったの? 私はどうして下着姿で、この部屋で寝てたの?」 私が彼を問い詰める口調は、無意識に鋭くなる。万が一彼と何かあったとしても、その事実を受け入れるのを脳が拒否しているからだ。「そんなに突っかからなくても、僕と茜さんとの間には何もありませんでしたよ。あなたが下着姿なのは、言い方は悪いですけど勝手に酔っ払って『暑い~』って服を脱いでたからですし。この部屋に連れてきたのは、住所を訊いてもワケの分からないことを言っていたから仕方なくこの部屋に……というだけなんで」「…………」「何ですかその目は? ホントですって」「……じゃあ、どうして笑ってるの? どうせ私の下着姿、色気ないなって思ってるんでしょう?」「…………まぁ、思ってますけど。スタイルいいのにもったいないなぁって」 彼のその言葉に、わたしは思わず赤面する。「スタイルがいい」なんて今まで何度も言われてきたはずなのに、どうして冴島くんから言われるとこんなに胸がザワつくのだろう?「私、金属アレルギーなの。高校生の頃にブラのホックで背中が思いっきりかぶれて飛び上がるくらい痛くなったことがあって。それ以来ホックも金属のワイヤーも入ってないスポーツブラしか着けられなくなったの。アクセサリーも指輪以外は着けられないし。ホントに面倒くさい女でしょ?」 それでも今まで、恋愛経験がなかったわけじゃない。彼氏だってできたことはあるけれど、歴代の彼氏からの評価はこうだった。「色気がない」、「可愛げが無い」、「プレゼント選びが面倒くさい」。 最初の二つに関しては私自身にも自覚はあるし、言われても仕方ないと思っているけれど。「プレゼント選び云々」に関しては知ったこっちゃねえわと言いたい。そんなの、あんたたちの想像力が欠落しているからでしょ? 金属アレルギーだって好きでなったんじゃないわよ! そんなことまで私のせいにするな! と。「そうですか……。金属アレルギーなんですね。つらいでしょうね。でも、そんなの、茜さんは何も悪くないじゃないじゃないですか。そんなことで『面倒くさい』なんて思っちゃダメですよね。少なくとも、僕はそんなふうに思いませんから」「冴島くん……」 彼は本当に、どこまでいい人なのだろう。私が今まで悩んでいたことを、「私のせいじゃない」
last updateDernière mise à jour : 2026-07-22
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見知らぬ部屋で目を覚ました朝 Page2
 何だかお高そうなゼリーなので、つい食べるのを躊躇してしまう。私はごく一般的なサラリーマン家庭に育ったので、こんなものめったに食べる機会がないのだ。ひとり暮らしを始めてからも自分では買おうと思わないし。ただ私が貧乏性だからというだけなのかもしれないけれど。「ええ、どうぞ。僕の大好きな夕張メロンのゼリーです。美味しいですよ。……あ、冷蔵庫にたくさんストックしてあるので遠慮しなくて大丈夫です」「そう? じゃあ……いただきます」 冴島くんから小さなスプーンを手渡され、遠慮がちにそれで口に運ぶ。ヒンヤリと冷たいゼリーはチュルンと喉を通り、甘くて瑞々しいメロンの香りが鼻から抜けた。「……ん、美味しい!」「でしょう?」 思わず顔を綻ばせた私につられてか、彼も無邪気な笑顔になった。……彼、こんなに可愛い顔して笑うのね。「うん。胃にも優しいし、喉越しも爽やかだし。今日の朝ゴハン、これだけで十分かも」「それはダメでしょ。急いで帰る必要がないなら、朝ゴハンも食べて行って下さい。これから僕がお粥か何か作りますんで」「えっ? 冴島くん、料理できるの?」 私ももちろん母から料理を叩き込まれ、自炊できるけれど。それは女だからで、料理ができる男性を今まで知らなかったのでちょっと意外だった(今まで付き合ってきた歴代の彼氏たちも、料理の「り」の字も知らないような男たちだった)。しかも、彼は御曹司だし……。「できますよ。父から『今の世の中、男も自立していないと生きていけない。家事も自分でできるようになっておけ』と言われているんで。それが冴島家の教育方針らしくて。……あ、こんな話、興味ないですよね。じゃあ、パパッと作ってくるのでちょっと待ってて下さいね。そのゼリー、平らげてしまっていいので」「……うん、分かった。ありがとう。お願いね」 キッチンでお米を洗い、鍋をコンロ(どうやらIHコンロらしい)にかける彼の姿を、私はゼリーの残りを食べながら眺めていた。何だか、二日酔いの私に甲斐甲斐しく世話を焼いてくれる彼がものすごくいじらしい。「……変なの。男に対してこんな気持ちになるなんて」 今まで私が好きになった男たちは頼りがいがあって、逞しくて、いつも私の前を歩いてリードしてくれるようなタイプばかりだった。「男らしい」という言葉はあまり好きじゃないけれど、まさ
last updateDernière mise à jour : 2026-07-22
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見知らぬ部屋で目を覚ました朝 Page3
「そういうあなたは、朝からそんなにガッツリ食べて大丈夫なの?」 昨夜は彼も結構飲んでいた気がする、それなのに、こんなに食べて胃がビックリしないのだろうか?「僕は大丈夫です。胃は丈夫ですし、アルコールにも強いんで」「それに、私より若いものね」 私はなぜだかそうコメントしたくなり、梅干しの実と一緒に二口めのお粥を口に運んでからそう言った。「いやいや! 二歳しか違わないんですから、それは関係ないでしょう。アルコールの分解指数の違いじゃないですか?」「……そうかもね」 梅干しと一緒に食べると、お粥はちょうどいい塩加減になった。「朝食を食べ終わったら、僕が車で家まで送っていきますね」「えっ? いいわよ、そこまでしてもらわなくてもっ! ここの最寄り駅まででいいから! ……っていうか、冴島くんって車運転できるの? 車、持ってるの?」「ええ、持ってますし運転できますよ。会社には電車で通勤してますけど、休みの日にはよく一人でドライブしたりしてるんです」「……へぇー……」 彼がマイカーを所持していることにもだけれど、電車通勤していることにも驚きだ。お坊っちゃまだけれど、やっていることは世間一般のサラリーマンと何ら変わらないらしい。「……ときに冴島くん、このマンションの最寄り駅ってどこ?」「ここは六本木ですよ」「ろっぽんぎ……」 思いっきりセレブの住む街、港区だ。さすがは本物のお金持ち……。私が住んでいるのは豊島区である。「ちなみに、昨夜僕らが飲んでいたバーはこのマンションのわりと近くにあるんですよ」「え、そうなの!?」 あのお店、まさか六本木にあったなんて! それじゃなおさら、彼に自分の飲み代くらい返しておかないと申し訳ない。「……あの、冴島くん。昨夜は奢ってもらっちゃってごめんなさい。ありがとう。せめて私の飲み代くらい、あなたに返しておきたいんだけど……。いくらで足りる?」 給料日前なので。わたしの財布の中身はちょっと乏しい。あまり高くないといいのだけれど……。 そう思いながら、バッグから長財布を取り出して開いたけれど。「そんな! いいですよ、茜さん。昨夜は僕が奢りたくて奢らせてもらったんですから。それに、昨夜は結構高い酒も飲んでましたからねー。茜さんの飲み代だけで…
last updateDernière mise à jour : 2026-07-23
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バリキャリ女の弱点 Page1
「――お世辞はやめてよ、冴島くん。どうせ本心ではメイクも色気ないって思ってるんでしょ?」 私、本当に可愛げがない。彼が平気で相手にお世辞やおベンチャラを言えるような人じゃないと、本当は分かっているはずなのに……。こんなことだから今まで、好きになった男とは上手くいかずに好きでもない男とズルズル付き合ってきたんじゃない。「いえいえ、茜さん。お世辞なんかじゃないですって。僕、本心からそう思ってますよ。茜さん、ホントに肌キレイだなって。ご自分では『色気ない』とか言ってますけど、毎日肌のお手入れだけには手を抜いてないからなんじゃないですか?」「……いや、別に特別なことは何も……。ただ、お風呂に入ってる時に必ず洗顔してるくらいで。下手に化粧水とかつけるとかえって荒れちゃうのよ」 メイクに目覚めた頃に、使っていた化粧水が肌に合わなかったのか酷く肌が荒れてしまい、デパートのコスメ売り場で美容部員の人に相談すると肌が弱いことが分かった。金属アレルギーなのもそのせいではないか、と。「自分の肌に合ったケアをしているのも、女子力が高い証拠だと思いますよ。背伸びをしなくても、それだけキレイな肌をキープできてるんですから」「そう……なのかなぁ? 私なんてもうオバサン一歩手前だし、特に化粧っ気もないし、私服は思いっきり実用性重視だし。華がないっていうか……。少なくとも男性受けはしない方なのに」「それは、不特定多数の男には、っていう意味でしょう? でも、茜さんは僕の贔屓目ではすごく魅力的な女性に見えますよ。茜さんのことが好きな男だって絶対にいます」「……どこに?」「えーっと、それは……」 彼の熱弁に水を差すように訊ねると、彼は困ったように答えに詰まった。でも、それはウソをついたからじゃないような気もする。ただ言いづらいだけという感じ。「……ごめんなさい、やっぱりいいわ」 何だか幼気な子犬をいじめたような気持ちになり、私の方がいたたまれなくなった。彼を困らせてしまったことを素直に謝ると、彼はキョトンとした顔をした。「……少なくとも、僕は茜さんみたいな女性、好きですよ」「…………えっ?」「いえ、何でもないです。それじゃ、そろそろ駅まで送って行きますね」「あ……、うん。ありがとう」 彼はサラッと流したけれど、今のはなに? 私、し
last updateDernière mise à jour : 2026-07-24
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バリキャリ女の弱点 Page2
「――ただいま……」 オートロック付きマンションのエントランスをくぐり、エレベーターに乗って五階の部屋に帰り着くと、私は誰もいない室内に向かって言った。当然のことながら返事があるはずもないのだけれど、これはもうクセのようなものだ。万が一返事があったとしたら、合鍵を渡してある私の両親もしくは姉だろう。……もしくは考えたくないけれど空き巣か。 「……って、誰もいるわけないよね……。さてと、まずはシャワーでも浴びるか」 昨夜の記憶はほとんどないけれど、多分あんな状態だったのならシャワーも浴びずに服を脱いで眠ってしまったのだろう。朝起きてからも、彼の部屋のシャワーをお借りするのは何だか気が引けるので遠慮した。シャワーを浴びるなら、誰に遠慮することなく裸になれる自分の部屋に帰ってからと思っていたのだ。 寝室のクローゼットから替えの下着のセットと部屋着、バスタオルを出して裸になり、それほど広くないバスルームに飛び込んだ。蛇口を開いて少し温めのお湯を浴びると、メイクがスルスルと落ちていく。こんなに簡単に落ちてしまうと、冴島くんの部屋からここに帰ってくるためだけにメイクしたのが何だかバカバカしくなる。でも、六本木という街にいたのに、そして電車に乗って帰るのにスッピンはやっぱりちょっとね……とも思った。 先に石鹸をきめ細かく泡立ててメイクを完全に落とし、それから洗顔をする。この手間を惜しんだら、せっかく冴島くんが「キレイだ」と言ってくれたこの美肌はキープできない。 それからアルコールの匂いが染みついた長い髪をシャンプーでキレイに洗い、トリートメントも念入りに。それをじっくり浸透させている間に、ボディソープを泡立てた柔らかめのボディタオルで全身をキレイに洗う。肌が弱いので、私は硬めよりも柔らかめのタオルで優しく洗うようにしているのだ。 全身の泡をお湯で洗い流したら、トリートメントも十分染み込んでいる頃合いなのでそれも洗い流す。最後に軽くブラッシングをして、もう一度全身に少し熱めのお湯を浴びてから上がった。 冴島くんには「もうオバサン一歩手前だ」なんて言ってしまったけれど、私はスタイルだってそんなに悪くない……いや、むしろいい方だ。それはもっと若い頃の話ではなく現在進行形である。 胸だって普通にDカップはあるし、ウェストはいい感じにくびれていて腰も
last updateDernière mise à jour : 2026-07-25
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バリキャリ女の弱点 Page3
 部屋着にしたのは今日特別どこにも出かける予定がなかったからなのだけれど、とりあえずスーツをクローゼットにしまい終えた私はスマートフォンをチェックする。誰かから電話やメッセージの通知が入っていないかの確認と、あとはSNSのチェックだ。一応これでも女子なので、流行には敏感な方である。 「……あれ? お姉ちゃんからメッセージが来てる。何だろ?」  私は通知をタップし、メッセージアプリを開くと。  【今日、ダンナが休日出勤で時間空いたから、一緒にショッピングでもどう? 家事は帰ってからまとめてやるから。 茜も、たまには仕事のこと忘れて息抜きしなよ】   という、何ともお気楽な文面だった。そして予定がなかった私を買い物に誘っている……。  先月で三十歳になった二歳上の姉は、一月に同期入社の男性と職場結婚をして兼業主婦になった。家事は会社が休みの週末にまとめてやっているらしい。 このメッセージの文面からも分かるように、姉はわりとお気楽な性格に育った。何事も「まぁ、何とかなるさ」とポジティブに考え、高校受験も大学受験も就職活動も乗り越えてきて現在に至る。  私がこんな生真面目でつまらない女になってしまったのは、姉の影響も少なからずあると思う。両親が私に対して特別厳しかったわけでもなく、「姉のようにはなりたくない」と姉を反面教師にして生きてきたからだろう。高校も大学も偏差値が高めのところを卒業しているし、一般職でOLになった姉とは対照的に、私は早く出世したかったので総合職での就職を目指した。腰掛けなんかじゃなく、本腰を入れてバリバリ仕事に打ち込みたかったのだ。 決して恋愛に興味がなかったわけじゃなくて
last updateDernière mise à jour : 2026-07-26
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バリキャリ女の弱点 Page4
「――ねえ、お姉ちゃん。私の恋愛がいつも上手くいかない原因って何だと思う?」 ランチのパスタを食べながら、私は姉に訊ねてみた。こういうことは本人には分からなくても、客観的には分かることもあるかもしれないから。「……そんなザックリ訊かれてもねぇ。逆に訊くけど、あんた自身は何が原因だと思うの?」「えっと……、服のセンスが悪いことと、可愛げがないこと……かな。男に媚びないし、仕事では男どもと対等に渡り合ってるし」「そうねぇ……。服のセンスはともかく、男に媚びないところとか、女だてらに仕事バリバリやってるところはあたし、むしろ羨ましいくらいだよ。どっちもあたしにはない、あんただけの長所だと思うし」「羨ましい? もうすぐ三十に手が届く歳なのに、婚期どころか恋愛適齢期も逃しまくってる私が?」 姉の反応は意外なものだったので、私は面食らった。すでに家庭を持って、仕事もしながら幸せを掴んでいる姉が私のことを「羨ましい」と思っているなんて。「茜、あんた卑下しすぎ。何も結婚や恋愛だけが女の幸せってわけじゃないでしょ? 中には仕事がイヤだから結婚に逃げる女だっているんだから。……あ、あたしは違うわよ? 違うけど! そんな中でさ、あんたは自分の希望どおりに総合職で今みたいな大企業に入社して、今は出世コース最短ルートの部署でチーフになってるんでしょ? バリキャリ女のお手本みたいな生き方できてるじゃない。仕事が生き甲斐っていう女の幸せだってあると思うよ?」「うー……、そうかもしれないけど。私だって彼氏はほしいし、いつかは結婚もしたいの。確かに、自分の意志でバリキャリの道を歩んではいるけど、それで人生終わるつもりはないんだから。……だから、私に足りないものって何かなと思ってお姉ちゃんに訊いたんだけど」 私って欲張りなんだろうかと、ふと思った。姉は自分の道を歩んでいる私を羨ましいと言い、私はごく普通の女としての幸せを掴んだ姉を羨んでいる。どちらも欲しいなんて、私はやっぱり欲張りなのかな? どちらかを諦める必要なんてないはずなのに。 そして、ふと思い浮かんだのはなぜか冴島くんの顔だった。……いやいや! 彼とは昨夜、何もなかったはず。彼は私のことが好きみたいだけれど、だからって私まで彼のことを異性として意識するのは違うんじゃないの?「……茜、もしか
last updateDernière mise à jour : 2026-07-27
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バリキャリ女の弱点 Page5
「それってさ、茜のことが好きだから、他の女子たちにはあえて感じ悪く接してるんじゃない? 『僕は他の女性になびくことはあり得ません』っていう意味で」「なるほどねぇ。っていうかお姉ちゃん、男ってみんなそういうものなの? 好きな人とそうじゃない人とで態度を変えるとか。それってすごく非効率な気がするんだけど」 〝非効率〟なんて多分、仕事でしか使わない言い回しだから恋愛ではそんな言い方しないのだろう。こういうところがきっと、私は可愛くないのだ。「ううん、みんながみんなそうってわけじゃないと思うよ。うちのダンナみたいに、女の子にモテたくて仕方ないっていう男もいるしね。だからって浮気性ってわけでもないんだけど。その彼はきっと、茜に対して誠実でいたいだけなんじゃない?」「…………そう」 つまり、彼の真面目さゆえということか。それは分からなくもないけれど、やっぱりこんなのは生きていくうえで非効率だと私は思う。彼にとっても損でしかないから。「でもね、彼、私にはホントによく懐いてるし優しいの。今朝だって二日酔いの私のために頭痛薬くれたり、わざわざお粥まで作ってくれたり」「お粥、作ってくれたの? 美味しかった?」「うん。優しい薄味で、梅干しと昆布の佃煮までつけてくれてね」「あら、マメねえ。なんか甲斐甲斐しくていじらしいじゃん。可愛いねぇ」「お姉ちゃんがそう言うと、なんか別の意味に聞こえるからやめて」 既婚者が年下の男に「可愛い」と言うのは、何だかアイドルや二次元の男性キャラに熱を上げるのと同じように聞こえるのはどうしてだろう? 姉は義兄との結婚生活に何か不満でもあるのだろうか?「そうかなぁ? ……あ、じゃあ逆にこう考えてみたら? 他の女子には無愛想な彼の笑顔とか優しいところ、自分だけが独占できるんだって。それ、自分だけの特権だってね」 姉は完全に、私が冴島くんと付き合う前提で話しているらしい。まだそうと決まったわけではないし、そもそも私は彼のことをただの可愛い後輩としか思っていないのだ。恋愛感情は、ハッキリ言ってないに等しい。……あくまで現時点では。「……私は別に、彼を独占したいわけじゃ……。無愛想なのは社会人としてどうなのかなって思ってるだけで」「はいはい、そんなにムキにならないの。ホントにただの後輩だと思ってるなら、どうしてそこまで彼のこと気に
last updateDernière mise à jour : 2026-07-28
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バリキャリ女の弱点 Page6
 この言葉が、私が恋愛するうえで足りないものを言い表してくれている気がした。私に足りなかったのは自分の容姿に対する自信だったのか。 「……そういえば今朝、彼も私の容姿を褒めてくれたなぁ。肌がキレイとか、スタイルいいとか、魅力的な女性だとか。それもお世辞じゃなくて、本心から言ってくれてるみたいだったの」 「ほらね。彼もそう言ってくれてるんだし、あんたはもっと周りからどう見られるかを考えた方がいいと思う。美容面とかスタイルキープには気をつけてるみたいだから、あとは服装とメイクのしかたを変えるだけでモテ要素はグンとアップするはずよ。通勤のファッションに関しても、実用的なだけじゃなくてちょっと女性的な要素をプラスするとか」 「なるほどねぇ……。確かに私、通勤用の服ってパキッとしたビジネススーツしか持ってなかったかも。それも、同じような型で色違いばっかり」  つまり、リクルートスーツに毛が生えたような(決して物理的な意味ではなく、たとえである)おカタいスーツということである。それじゃ、色気がないと言われても仕方がない。 「そうなの? もったいない! あんたの会社、服装はビジネススーツじゃないとダメってことはないんでしょ? だったら、ちょっとブラウスにフェミニン要素を取り入れるとか、女性的なピンクとかクリーム色を選んでみるとか」 「あー、なるほどね。でも、正直言うと今、ちょっと手持ちがね……。口座にはまだが残高あるからカードを使えば問題ないんだけど、給料日前だしあんまり高い服は買えないのよね」   私はここで、すごく切実な問題を姉に打ち明ける。来週には今月分の給料が振り込まれるのだけれど、それまで約一週
last updateDernière mise à jour : 2026-07-29
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